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1月18日のまにら新聞から

大統領の毒杯

[ 718字|2010.1.18|社会 (society)|新聞論調 ]

最高裁長官任命問題

 攻撃は最大の防御といわんばかりに、プノ最高裁長官の後任問題で、現政権はアロヨ大統領による後任任命という違法行為の宣伝活動に熱を上げている。過去の判例から違法性が明白であるにもかかわらず、現政権はなぜ固執するのか。

 アロヨ大統領の統治は任期満了まで、任命権は公共サービスのためにある。残された理由は政治的かつ個人的な目的でしかない。大統領は昨年の施政方針演説で、大統領特権を任期満了まで行使すると主張し、民主主義議会に盾突いた。大統領は自身の後任者への円滑な権力の移譲を拒否したことになる。大統領は最高裁長官の任命を執ように主張し、法曹界の反対を押し切るつもりだ。

 大統領は退任前に最高裁長官・判事を全員任命し、退任後も最高裁とその機能への影響力を維持することを望んでいる。次期大統領が任命した最高裁長官が、自身の政策に批判の目を向ける可能性に動揺しているのだろう。任命禁止期間のこれまでの原則に反して、大統領は自身の息のかかった人物を任命したい意向だが、憲法や理念、三権分立は侵されることになる。

 実際のところ、大統領の毒杯を受け取って最高裁長官に就任する法曹界関係者はいない。最高裁判事は、大統領任命権の禁止期間における、モラン元最高裁長官の例を踏襲するだろう。同元長官は1945年に就任し、50年の退官後には初代駐スペイン大使に就任した。53年11月の選挙で敗北したキリノ大統領は退任直前に元長官を最高裁に戻す書類に署名したが、元長官は任命権は次期大統領にあるとして拒否した。

 アロヨ大統領は批判側の言い分に従う傾向があり、法曹界が「違法、不適切」とさえ主張すれば、一件落着するだろう。(17日・インクワイアラー)

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