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5月15日のまにら新聞から

「比の海洋権益、民間で保護」 補給船団きょう出発

[ 1333字|2024.5.15|社会 (society) ]

スカボロー礁への補給任務を行う民間船団が15日にサンバレス州から出港。中国艦船が再び妨害か

記者会見をするアティン・イトのエディシオ・デラトレ共同代表(左)、ラファエラ・ダビッド共同代表(右)=14日、サンバレス州ボトラン町で竹下友章撮影

 南シナ海におけるフィリピンの海洋権益保護をうたう民間団体「アティンイト」が、中国との緊張が高まるパナタグ礁(英名スカボロー礁)への3日間にわたる補給作戦を行うため、15日早朝にルソン地方サンバレス州ボトアン町を出発する。2012年に発生した比中艦船のにらみあい事件以降、中国が実効支配する同礁には、今回の補給作戦の妨害を目的とするとみられる中国海警局船4隻、大型海上民兵船24隻が集結。昨年から海警局船・海上民兵船は、南シナ海で比公船や比漁船に放水、レーダー照射、危険操船、遠距離音響装置などを用いた妨害を繰り返しており、今回の民間船団も同様の妨害を受ける恐れがある。

 出港の前日、サンバレス州ボトラン町で開かれた会見で、アティンイトのエディシオ・デラトレ共同代表は、「これは純粋な市民による補給事業。2016年の南シナ海仲裁裁判所判断で認められた比の排他的経済水域(EEZ)の権益を平和的に行使するだけだ」と強調。「中国側の報道をみるとわれわれが大国(米中)間の競争の道具だと描かれているが、われわれは米国の駒でもなんでもない。民間人の権利を引き続き行使するだけで大げさだ」と述べた。

 昨年12月に同団体が実施した最初の民間補給作戦は、中国海軍の追尾などに遭い中断している。「今回は中国海軍が追尾した場合でも、作戦を遂行するか」とのまにら新聞の質問には、「追尾だけでは何の害もないので継続する」としながら「進路妨害など危険が状況が発生した場合は計画を変更する可能性もある」と説明した。

 一方、「前回は船団に比沿岸警備隊(PCG)巡視船が入っていたが、今回は純粋な民間による補給事業だ」と指摘。「PCGはわれわれの安全を確保するため、巡視船を派遣し近海で監視してくれることになった」と報告した。その上で「通常、比の領海を出ると中国艦船から追尾されるが、今回はPCGからも中国からも追尾されることになる」と苦笑した。PCGは日本供与の44メートル級巡視船を派遣すると発表している。

 ▽領海に入る可能性も

 パナタグ礁は12カイリの領海のみ有する高潮高地。PCG、漁業水産資源局(BFAR)が最近実施した同礁への補給任務で中国は、比公船が同礁の領海内に入ったとき「致死的圧力」の放水砲を発射するなど、より激しい実力行使をしている。「今回は領海内に入るのか」との質問に、アティン・イトのラファエラ・ダビッド共同代表は「秘密だ」とだけ述べ、否定はしなかった。

 「今回の補給事業が中国を刺激する可能性はないか」との質問には、デラトレ共同代表は「パナタグ礁では以前、中国、ベトナム、フィリピンの漁民が共に漁業を営んでいた。政府同士の関係の変化が政府の任務に影響をあたえるのは分かるが、民間の活動に影響を与えるべきではない」と回答。ダビド共同代表は「緊張をエスカレートしているのはわれわれでなく、中国だ」と語気を強めた。

 民間船団は最終的に20トン級の漁船5隻に、ボランティア、メディア関係者、国際オブザーバーなど107人乗船する。それに小型漁船約100隻が合流。15日から17日にかけ、漁船への物資補給、航行競技、ブイ設置などを行う。(竹下友章)

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