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11月22日のまにら新聞から

対戦相手への思いやり

[ 693字|2010.11.22|社会 (society)|新聞論調 ]

祈るバッキャオ選手

 フィリピンの誇りであり、偉大なチャンピオンでもあるマニー・パッキャオ選手の見事な試合ぶりについて、多くの記事が書かれた。しかし個人的には、パッキャオ選手の対戦相手への思いやりに強く引かれた。

 対戦相手のマルガリト選手が顔を連打され、手も足も出ない状態になったのを見てとったパッキャオ選手は、レフェリーにこれ以上、苦痛に耐えられないだろうと告げた。ところがレフェリーはファイト再開を促した。

 首都圏マニラ市で学ぶインドネシア人の司祭は、パッキャオ選手の「ボクシングとは相手を殺すことではない」という言葉、対戦相手への振る舞いから、かなりの影響を受けたと話した。司祭は、「わたしはパッキャオ選手に最大の敬意を払う。真のキリスト教徒であり、偉大なボクサーでもある」と語った。

 パッキャオ選手の相手への思いやりは、今に始まったことではない。2008年のディアス選手との対戦を思い出して欲しい。マットに倒れたディアス選手に近づいて助け起こそうとしたのだ。しかしレフェリーは、パッキャオ選手にコーナーへ戻るように命じた。試合後、理由を問われたパッキャオ選手は、「彼の状態が心配だった」と語った。

 敬けんなパッキャオ選手の姿にわたしも感銘を受けた。リングに上がるとコーナーでひざまずく。神に祈りを捧げ十字を切る。一方的に勝利した後も、感謝の言葉をつぶやき、やはりひざまづいて祈る。

 もちろんパッキャオ選手の勝利の要因には、戦略をはじめ厳しい訓練などがあるのだろうが、祈る人としてのパッキャオ選手の姿も忘れてはいけない。(16日・ブレティン、ベルア—ル・サンルイス氏)

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