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5月8日のまにら新聞から

中国「3回合意を破った」 比外務省は真っ向否定

[ 1352字|2024.5.8|政治 (politics) ]

中国外務省「比は南シナ海セカンドトーマス礁に関する合意を3度破った」

 中国外務省の林剣報道官は6日、前政権で取り交わされたという「紳士協定」を含め、南シナ海アユギン礁(英名セカンドトーマス礁)に関する合意がマルコス政権によって3度破られていると述べた。4日の在フィリピン中国大使館発表について、本省がさらに詳細に説明した。一方、比外務省は7日、「中国の主張するような資料、記録、取引は存在しない」との声明を出し、真っ向から否定した。

 中国外務省の林報道官は、補給任務の際に建築資材は持ち込まないという内容だったといわれる「紳士協定」について、「比政府と2021年末に合意した」とし、マルコス政権に変わっても昨年2月まで同協定が順守されていたと説明。さらに、昨年9月に「中国が比の大統領特使を招き、仁愛礁(アユギン礁)の管理法について協議して内部了解に至り、これは比の上層部から承認された」と述べ、「この了解に基づいた補給が一度だけ実施されたが、比側に破棄された」とした。

 さらに、今年はじめに「外交チャネルと比国軍西部司令本部を通じて『新モデル』に合意がなされ、新モデルは国防相、国家安全保障担当大統領顧問を含む指揮命令系統からの承認を受けたことを比国軍に何度も確認した」とし、新モデルに基づく補給が「2月2日に実施されたが、その後、比は新モデルを反故(ほご)にした」と主張。「比が何を言おうが、紳士協定、内部了解、新モデルを取り結んだ事実は変わらない」と強調した。

 翌7日、比外務省は声明を発表。「南シナ海に関連する合意を承認できるのは、大統領だけだ」とし、その上で「現政権でアユギン礁に関連した中国の提案に合意した閣僚はいないと確認する。比政府に関するものについて、中国大使館が主張したようなものを示す資料、記録、取引は存在しない」とした。

 比外務省は、中国大使館が「現政権と『新モデル』で合意した」とする報道官声明を出した翌日の5日にも声明を発表。「中国大使館が主張するような、アユギン礁に関するいかなる『新モデル』の取り決めも認識していない」とし「外務省は自国の排他的経済水域(EEZ)、大陸棚に有する主権的権利、管轄権を放棄するいかなる合意も結んだことはない。事案の重要性より、政府の最高レベルの承認なしで合意が結ばれることはない。(中国に名指しされた)国防相、国家安全保障担当大統領顧問もいかなる非公式な取り決めもなかったと否定している」と述べていた。

 ▽「調査はしない」

 「新モデル」は、国軍の西部司令部を通じて合意されたと中国が主張したことを受けて、同司令部司令官のアルベルト・カルロス司令官が中国との合意を結んだのではとのうわさも流れた。

 比国家安全保障会議のマラヤ事務局長補は6~7日にかけ複数のテレビ番組に出演し、このうわさを否定。「中国の偽情報をまともに取り合うと、プロパガンダに手を貸すことになる。わざわざ調査を行う価値はない」とし、西部司令部への調査を行わない意向を表明した。

 比国軍は7日、のアルベルト・カルロス中将が同日から「個人休暇」に入ったと発表。ただ今回の「新モデル」問題とは無関係とした。国軍西部司令部はまにら新聞の問い合わせに対し、この問題で声明を発表する予定はないと回答している。(竹下友章)

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