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3月7日のまにら新聞から

今こそ再評価を キリノ大統領

[ 733字|2016.3.7|社会 (society)|新聞論調 ]

 1948年、当時のロハス大統領が急逝したことにより、キリノ副大統領が大統領職を代行、翌年には選挙で勝利し正式に就任した。しかし、2期目を狙う53年の選挙では、キリノ大統領は国内で最も非難を浴びた人物となった。その結果、彼が国家のために行った善政という遺産は、それ以降の大統領批判の影に隠れてしまった。今こそキリノ大統領を再評価する時だ。

 キリノ大統領は、副大統領時代だった47年に、フィリピン大の学生たちにこう語った。「金銭や富を成功の究極の形と思い込み、自身のモラルをおとしめてはならない。誠実さが最高の信条だ」。大統領はこれから国の指導者になる若い世代に、不正に得た富の落とし穴を教えたかったに違いない。大統領は、人は自分や家族のことを第一に考えるのが普通で、福祉の精神は家庭から生まれるが、それをそこで終わらせてはいけないと呼び掛けた。「私たちは一人で生きているわけではない。全国民の運命や未来と不可分につながっている」。

 先日、キリノ大統領の遺体が首都圏タギッグ市の英雄墓地に埋葬され、アキノ大統領が式典を取り仕切った。キリノ大統領は、英雄墓地に埋葬された3人目の大統領である。

 49年、キリノ大統領が就任式を行った12月30日は、英雄ホセ・リサールが処刑された日だ。このとき、大統領はこう言った。「私は我々がつくり上げた民主主義と、自身を完璧なものに高め上げる国民の能力を信じている。それ故、他者と自身を分ける政治の壁を乗り越えて国家のすべての人々が手を取り合うよう願う」。

 多くの歴史研究者は指摘している。キリノ大統領は不当に名誉を傷つけられているが、本当は素晴らしい大統領だったのだと。(3日・ブレティン、ジェマ・クルズ・アラネタ氏)

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