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5月30日のまにら新聞から

米国カード生かせ

[ 723字|2011.5.30|社会 (society)|新聞論調 ]

南沙諸島領有権問題

 くしくも中国国防相来比のさなかに、南シナ海南沙諸島における同国の軍事的建造物の増強が報道された。来比直前には「中国機」とされるジェット戦闘機が比領空を侵犯した。

 これらを受け、アキノ大統領は「領海を守るため、国軍の防衛力強化を図る。しかし、軍拡競争にはくみしない」と発言したが、世界屈指の軍事大国となった中国を前に「防衛力強化」や「軍拡競争」を口にすることはもはや意味を成さない。

 そうは言っても、国軍の能力は高めねばならない。比領土内での独立国家樹立や革命を目指す「内なる脅威」に対抗し、比政府の主権を守るためだ。しかし、ラモス政権下(1992〜98年)から続く「国軍近代化計画」で、一体何が近代化されたのか。同計画に充てられるはずだったボニファシオ基地の売却益80億ペソはどこへいってしまったのか。

 中国による南沙諸島の領有権主張は、成長し続ける国内経済・産業を支える資源確保が目的だ。今後も、政治、外交的に比を懐柔しながら、軍事的建造物の増強を続けるだろう。妥協するかのようなことを口にしながら、実は一歩も引かない。それが中国のやり方なのだ。

 中国との軍拡競争が絵空事のような状況となり、国軍近代化もままならないとすると、われわれは政治、外交的な手段で中国という手強い相手と向き合うしかない。そこで、アキノ大統領には「米国カード」の有効活用を提言したい。

 外交的解決を目指すにしても、比米相互防衛条約という後ろ盾なしでは、中国に対抗することは難しい。故オプレ元外務長官が残した言葉通り、「孤立という弱さではなく、同盟国の力を生かした交渉」が求められる。(26日・タイムズ、ダンテ・アン氏)

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