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5月30日のまにら新聞から

矯正制度を正せ

[ 708字|2011.5.30|社会 (society)|新聞論調 ]

元州知事の脱走

 元バタンガス州知事の脱走が発覚したニュービリビッド刑務所(首都圏モンテンルパ市)を管轄する司法省矯正局のジョクノ局長は、「矯正」という言葉に新たな意味を与えた。発覚直後、一部収監者の「外出」を以前から認知していたことを示唆した上で、「(外出は)取るに足りないことだ」という趣旨の発言をした。そして、司法省の内部調査が始まった今もなお、この不規則発言を「矯正」しようともしない。

 脱走という重大事に接して、なお平然としていられるジョクノ局長の態度の背後にあるのは、収監者の社会的地位と資力におもね、特別待遇を認めてきた「矯正制度」の現実だ。

 カトリック司教協議会関係者が指摘するように、特別待遇は数十年前から存続し、レイプ罪で終身刑判決を受けたハロスホス元下院議員らがその恩恵に浴してきた。これらVIP収監者は、公判段階から資力とコネを駆使して無罪判決を勝ち取ろうとし、有罪となった後もエアコン付き「監房」での生活を認められる。商売っ気のある刑務官は、携帯電話を収監者にレンタルして小銭を稼ぎ、違法薬物の内部取引も行われている。

 これら刑務所内の特殊事情は法曹界関係者らの間で「公然の秘密」(デリマ司法長官)として扱われてきたらしいが、司法長官自身の口からこのような言葉が出ること自体、われわれにとっては衝撃的だ。

 元知事の脱走事件は、金持ちと権力者にすり寄る一方で文無し収監者には容赦のない刑務所内の現実を露呈し、抜本改革のための機会を与えた。デリマ長官はこの好機を逃すことなく、刑務官と収監者のなれ合い排除や刑務所の施設整備を断行し、矯正制度を矯正しなければならない。(24日・インクワイアラー)

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