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5月16日のまにら新聞から

「英雄」への追伸

[ 718字|2011.5.16|社会 (society)|新聞論調 ]

ビンラディン容疑者殺害

 比政府は先日、ウサマ・ビンラディン容疑者殺害を受け在マニラ米大使館前で抗議行動をしようとしたイスラム教徒らに、同容疑者を英雄視しないよう促した。

 キアポのイスラム教徒らはビンラディン容疑者を「英雄」とは呼んでいない。正確には「殉教者」だ。彼らは、殺害の残忍さとイスラムの教えに反する海葬に抗議しているのだ。

 問題は極めて複雑で黒白で片付くものではない。ある者の英雄は他の誰かにとっては敵になる。チェ・ゲバラはビンラディン容疑者同様、米国に脅威を与えた。ビンラディン容疑者が世界貿易センタービルの破壊によってそれを遂行した一方、ゲバラはキューバの独立と社会主義化の主導でそれを成し遂げた。テロと革命の区別がつかない世界で、「やり方」は結果に大きな影響を与える。

 しかし、ビンラディン容疑者の悪魔視にはテロ撲滅だけでなく、米国によるイラク攻撃の正当化という目的がある。「対テロ戦争」の名の下で行われた侵略は、大量破壊兵器の存在というウソで米国民を好戦的愛国主義に変え、自らが礎を築いた「民主主義」の教えに反する道を選ばせた。

 イスラム世界のテロは、世界中で「テロ」攻撃を繰り返す米政治家に対する非難でもある。高性能な爆弾で子供たちや罪もない市民を抹殺することは、テロ以外の何者でもない。9・11事件の犠牲者とは違い、これらの「テロ」で犠牲になった者たちは名前も事件も記憶されない。

 ビンラディン容疑者の持つ美徳の宣伝をやめさせるのと同時に、ブッシュ前大統領とその一党が世界に対して成したことを認識するべきだ。後者は前者のように殺害されないことを感謝しなければならない。(12日・インクワイアラー、コンラド・デキロス氏)

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