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5月9日のまにら新聞から

栄枯盛衰

[ 705字|2011.5.9|社会 (society)|新聞論調 ]

ビンラディン容疑者の死

 国際テロ組織アルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者が米軍に殺害されてから3日が経過し、少しずつ詳細が明らかになってきた。同容疑者の死がもたらす意味については、まだおぼろげなままだが、確実に言えることがある。何千という無実の人間の虐殺をライフワークにした人物が自身を破壊的な死へと追いやったことだ。 

 ビンラディン容疑者の死がもたらす意味は議論の必要がある。世界中で最重要指名手配犯とされていた人物の映画のような結末は、彼が築いたテロの一時代にどのような影響を与えるだろうか。大半の専門家は、比国内も含めて報復攻撃が起きる可能性を予想する。

 アルカイダという組織が現状の形態で存続するとは想像し難い。存続できないというのではなく、同容疑者の不在で分派が手に負えなくなる可能性があるからだ。そうなれば、テロ撲滅に向けた戦いはさらに困難を極める。

 もし同容疑者が7、8年前に殺害されていれば、大規模な暴動が発生し、中東諸国が混乱に陥っただろう。だが、今はそうした動きはみられない。その理由の中には、無実なイスラム教徒を死に追いやるイデオロギーは(本来の)イスラムの教えに反するという思想の高まりや、民主化を求める動きが存在しているからだ。

 いわゆる「アラブの春」の行方は、まだ分からない。チュニジアやエジプトのような勝利もあれば、リビアような危険な実例もある。しかし、何百万というイスラム教国の市民が個人と政治的自由を求めている事実に疑いはない。

 同容疑者の影響は、依然勢いはあるものの、少しずつ片隅に追いやられる。数年後、彼は完全に忘れ去られるかもしれない。(5日・インクワイアラー)

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