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8月2日のまにら新聞から

食糧庁の役割見直し

[ 696字|2010.8.2|社会 (society)|新聞論調 ]

コメ過剰輸入問題

 大部分の比人にとって、コメは本能的問題だ。アキノ大統領が施政方針演説で暴露した過剰輸入と国家食糧庁(NFA)長官の「NFAの倉庫はコメであふれている」発言に大きな衝撃を受けた国民は少なくあるまい。

 コメ問題の短期的課題ははっきりしている。NFAが保管している在庫量の精査と当面の輸入停止だ。アキノ政権は既に輸入停止を命じたようだが、今後は国内米の収穫期と輸入再開時期が重ならないよう、つまり国産米の価格が下落しないよう慎重な判断が求められる。

 もう一つの短期的課題は、NFA在庫米の放出時期と方法。放出のタイミングを誤れば、国内市場がだぶつき、国内米より高価な輸入米が売れ残ってしまう。また、一部上院議員は「最貧困層に在庫米を無料で配給せよ」と叫んでいるが、受益者選定は社会福祉開発省などの調査結果を参考に進めるべきだ。

 中期的課題は過剰輸入の責任追及。アロヨ前政権下、コメ不足の危機感が高まる中で20万トンが無関税で輸入され、NFA倉庫で今も眠っている。モンテマヨー元農務長官の言葉を借りれば、無関税輸入は「政府公認の密輸」であり、この密輸を可能にした張本人らを突き止め、処罰しなければならない。

 そして、長期的課題はNFAの役割見直しだろう。食糧安全保障の確保とコメ供給・価格の安定という2つの役割は、時に大きな矛盾を生じさせる。つまり、供給量を安定させるためコメを大量輸入すると、国内米の価格が下落する。一方で、価格下落を食い止めるため、国内米を定額で買い入れなければならない。その矛盾の結果が、1770億ペソに上るNFAの累積赤字だ。(7月30日・インクワイアラー)

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