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11月26日のまにら新聞から

通貨のジレンマ

[ 731字|2007.11.26|社会 (society)|新聞論調 ]

ペソ高がもたらす悲劇

 ペソの対ドルレートが約七年ぶりに一ドル=四二ペソ台に突入した。専門家らは年末までに同四〇ペソに達すると予測する。現政権は、強いペソを「比経済が真に転換点に到達した」指標だとの見解を示している。もしペソが一ドル=五五ペソ台のままで、原油が一バレル百ドルまで高騰した現状を迎えていれば、急激なインフレに襲われ、事態は最悪だったろう。

 アラブ首長国連邦にいる比人海外就労者(OFW)は、一時的にドル不足状況を生み出してドルの価値を高めようと、送金を中止したという。サウジアラビアで始まったこの運動は中東諸国に広まり、日本、米国、イタリア、香港などで働くOFWからも好感されている。

 OFWに加え、地元の輸出業者もペソ高に大きな打撃を受けた。今年六月、比輸出業連盟セブ支部は、輸出産業をこの破局から救うため、早急に介入するよう大統領に求めた。

 ペソ高の影響が大きいのは中小企業だ。セブ州だけでも家具業界の三十五社が閉鎖に追い込まれ、約五万人が職を失った。OFWと同様、輸出業者は、為替相場の変動を抑制し、通貨安定を確保するメカニズムを要望している。

 しかし、経済学者によれば、現在起きていることは、需要と供給という最も基本的な経済の原理が働いたにすぎない。ドルの供給が増えて需要が減っているため、価値が下がっているだけだという。外貨は主として輸出収益、観光客、海外からの投資、OFW送金でもたらされる。米国の景気が悪く、世界市場でドル安が続く限り、こうした傾向は変わらないだろう。

 政府や中央銀行ができることは限られている。時代の英雄と呼ばれるOFW、輸出業者が直面せざるを得ないのは、この悲しい現実である。(20日・タイムズ、アリト・マリナオ氏)

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