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7月26日のまにら新聞から

就労者保護を優先

[ 690字|2004.7.26|社会 (society)|新聞論調 ]

駐イラク軍の撤退

 フィリピンが駐イラク平和維持軍撤退を決定したのは、ブッシュ米大統領やサダム・フセインとは関係なく、シンガポールで死刑に処せられた比人海外就労者、フロール・コンテンプラションさんの記憶とつながっているためだった。外国人に説明するのは難しいことだが、彼女の処刑は、当時のラモス政権に衝撃を与え、国民の怒りを抑えるために閣僚二人を更迭しなければならなかった。

 この事件の教訓は、比人海外就労者たちは、高賃金と引き替えに家庭や家族との団らんから引き離された痛みを強く感じており、彼らがうっ積したうっぷんを爆発させると政府を転覆させ得るということだった。今回、高尚な外交政策の犠牲となり、海外就労者が首をはねられたというイメージが生まれれば、それは「裏切られた夢」のシンボルとなる。就任したばかりの大統領の政権を転覆するほどの圧力となったであろう。比の形ばかりの平和維持軍が予定を前倒しして撤退するまでの間、比政府は大衆パワーの前に「人質」となり、政治的生き残りをかけて行動しなければなかったのである。国民はこれを注視していた。

 米国においてもイランの米大使館員人質事件の危機感の高まりの中でカーター大統領が選挙に敗れ、国内の反戦運動の高まりで米国が軍隊をベトナムから撤退させたように、一国の外交政策とは国内政治の延長に過ぎないのだ。

 今回の決断は、政権の生き残りをかけた行為であった。もし何らかの原則があるとすれば、比人海外就労者の保護こそが比の外交政策の最重要課題であるということである。国民の祝福のない外交政策は常に危険である。(23日・インクワイアラー、ラウル・パガラガン)

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