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7月5日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 572字|2004.7.5|社会 (society)|ハロハロ ]

 六月下旬、上院議員の息子グループと富豪の息子グループが街の真ん中で派手な銃撃戦を演じた。ところが逮捕者がひとりも出ない。警察の言い分を聞くと、被害届けが出ないから、事件が成立しないのだそうだ。フィリピンの刑事訴訟法を見て驚いた。第一条に「すべての刑事訴訟は告訴ないし告発によって始まる」という主旨が書かれている。誤って民事訴訟法を読んだのではないかと目を疑ったが、そうではなかった。日本なら、刑事事件は被害届けがあろうとなかろうと、警察や検察が犯罪を探知したら捜査を始める。逆に告訴や告発があっても捜査しないことすらある。

 いやはや。この国では犯罪とは公共に対する害悪ではなく、あくまで私的な利害の衝突であって、司法機関が被害者に代わって刑罰という名の報復をしてやるという発想なのか。何やら情熱の国スペインの植民地だった歴史を感じさせる。

 政治家、富豪双方の家族は互いに息子をかばうため告訴などしない。もちろん警察は「予備捜査」と称して現場検証したが、事件になるのか、ならないのか分からないのでは捜査に熱は入るまい。もっと困るのは事件のもみ消しである。加害者側が金持ちなら、被害者や家族に相応の口止め料を出して告訴させない。これでは社会正義もカネ次第だ。この国では、警察ざたもカネ次第ということが法的にも言えてしまうようだ。(水)

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