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6月7日のまにら新聞から

「弱い大統領」を甘受

[ 681字|2004.6.7|社会 (society)|新聞論調 ]

大接戦選挙の産物

 アロヨ大統領と映画俳優ポー氏、どちらが勝者となろうと、われわれは「弱い大統領」の就任を受け入れなければならない。

 アロヨ勝利の場合、大統領は、フィリピン社会に存在するさまざまなグループのコーディネーター役となる。選挙戦で社会各派の支持を取り付けようと、自身の独立性を犠牲にしたためだ。その一例は、プロテスタント系宗教団体、イグレシア・二・クリスト。数百万の信者票は「無料」ではない。

 ポー勝利の場合、アロヨよりさらに弱い大統領が誕生する。政策理念や問題解決能力の欠如した大統領を前に、われわれは風に流されるに任せるしかない。また、ポーは大統領のイスと引き替えに、アンガラ上院議員やエストラダ前大統領への多大な負債を背負うこととなる。

 そして、次期大統領が向き合わなければならない最も強大な社会集団は国軍だ。憲法上は政治思想を持たない職業軍人組織だが、歴代政権の反政府勢力対策を仕切ってきたのは国軍にほかならない。次期大統領も国軍の要求に逆らうことはできない。

 わずか百万票差の大接戦となった大統領選。裏返せば、アロヨもポーも「少数派の大統領」でしかない。国をまとめるヒーローを待ち望んだ、社会の期待にはほど遠い。私の試算では、比社会のさまざまなグループを支配するには、二位以下に少なくとも六百万票差をつけて当選しなければならない。

 その意味で、前回選挙で圧勝したエストラダ前大統領は「大統領適格者」だった。しかし、二〇〇一年の政権交代劇は「多数派の大統領」でさえ、任期を全うできないことを国民に示してしまった。(3日・マラヤ、フリウス・フォトゥナ氏)

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