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9月1日のまにら新聞から

共感力育てる作品を

[ 691字|2003.9.1|社会 (society)|新聞論調 ]

シネマニラ国際映画祭

 熱狂的な映画ファンは現在、マカティ市主催の第五回マカティ・シネマニラ国際映画祭に群がっている。 映画祭では、ブラジル・リオデジャネイロ郊外のスラム街を舞台にギャングの生き様を描いた「シティ・オブ・ゴッド」(フェルナンド・メイレレス監督)、ベルリン国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞した日本映画「幸福の鐘(ブレッシング・ベル)」(SABU監督)など約八十本の映画が上映されている。

 中でも北野武監督による「Dolls」は近松門左衛門の心中物「冥途(めいど)の飛脚」をモチーフにしたストーリー、美しい映像美で多くの観客に感銘を与えた。ある時はみずみずしく、またある時はモノクロとなる日本の四季や台詞のない長い沈黙はまさに「ゼン(禅)」。日本そのものだった。

 昼間のテレビ番組と違い、上映されている多くの映画は、人間の在り方について問うまじめなものだ。フィリピン大学映画研究所の所員は、「沈黙を嫌う比でDollsのような映画が作られるまでには百年はかかるだろう」と語っている。フィリピン芸術賞を受賞した映画監督、エディー・ロメロ氏によると、「映画は国によって大きな違いがあり、文化の違いを明確に表すもの」なのだ。

 だが、ロメロ氏は「映画は時代と社会の状況を反映する最も強力な媒体である」とした上で、「映画は異文化を相互に結びつける力も持つ」とも説明している。優れた映画は同情心など人類共通の共感力に訴え、異文化間の相互理解を促進させるからだ。世界は多くの困難やストレスに囲まれている。わが国の映画監督にはこのような共感力を育てる映画作りを期待したい。(26日・インクワイアラー)

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