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3月4日のまにら新聞から

「秩序守る戦いを多国間で」 今年初のASEAN首脳会議へ参加

[ 1149字|2024.3.4|政治 (politics) ]

マルコス大統領が今年最初のASEAN首脳会合会場となる豪州へ出発。中国の海洋進出を念頭にルールに基づく秩序の維持を訴える予定

豪州に到着したマルコス大統領夫妻=3日(大統領府が公開)

 マルコス大統領は3日、豪州・東南アジア諸国連合(ASEAN)関係50周年記念特別首脳会議に参加するために比を発ち、同日午後4時過ぎ(比時間)に豪州メルボルンに到着した。今年で最初のASEAN首脳レベルが集結する同会議への出席を前に行った渡航前演説でマルコス大統領は、南シナ海に関する中国の主張を完全に退けた2016年仲裁裁判所判断を含む国際法に基づく海洋秩序を守るために連携を強めるべきという比の立場を、議長国である豪州と足並みをそろえて訴える方針であることを明らかにした。

 さらに今回の豪州訪問では、豪州の独立シンクタンク「ローウィ国際政策研究所」を訪問し、基調講演を行う予定。大統領は昨年ハワイを訪問した際に、シンクタンクでの講演でベトナムやマレーシアなど中国以外の南シナ海紛争当事国との間での南シナ海行動規範(COC)のために交渉に入っていることを明らかにしている。

 また、大統領は豪・ASEANサミットのサイドラインとして、ニュージーランドのクリストファー・ラクソン首相、カンボジアのフン・マネット首相との2者会談も行う。

 ▽戦後秩序の防衛戦

 先月末に国賓として豪州を訪問した際、マルコス大統領は比大統領として初めて行った豪州議会演説で「フィリピンは今、1942年と同じように、地域の平和を侵し、安定を侵食し、成功を脅かす行為の前線に身を置いている」と説明。南シナ海で中国による実力行使がエスカレートする現在の状況を、太平洋戦争初期の日本軍の破竹の進撃の前にケソン初代大統領がマッカーサー司令官と共に一時豪州に逃れた1942年の状況になぞらえた。

 その上で、「わが国の主権、主権的権利、管轄権を断固として防衛する。『わが国の領土を1インチでも奪おうとする外国の試みは決して許さない』という就任初日に表明した決意は、揺るぐことは決してない。われわれは降伏することはない」と宣言。「かつてルールに基づく国際秩序を築くために戦っていたように、今はそれを守るために戦っているのだ」と述べ、海洋安全保障と経済安全保障を促進する必要性を強調。そのための取り組みが比豪2カ国だけでなくASEANでも強化されることに期待を表明した。

 先月末の豪州訪問時、両国政府は海洋状況把握(MDA)、サイバー・重要技術協力、公正競争に関する合意を取り交わし、海洋、サイバー空間、経済での安全保障協力をさらに推進する道筋を整えた。

 それに対し、中国外務省の毛寧報道官は、「南シナ海は現在比較的安定している」と述べ、戦時にたとえたマルコス大統領と正反対の認識を提示。「関連国の海上安全保障協力は他国の権益を害すべきでなく、地域の平和と安定をかき乱すべきではない」とけん制した。(竹下友章)

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