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6月20日のまにら新聞から

権力監視の意義

[ 717字|2011.6.20|社会 (society)|新聞論調 ]

相次ぐ報道関係者殺害

 ルソン地方南カマリネス州で13日、ラジオ局解説者のロメオ・オレア氏が射殺された。現政権下で殺害されたジャーナリストとしてはこれで6人目。事件内容は、「オートバイに乗った男性が職場に向かう途中のラジオ局員を後部から銃撃」で、これまで起きた報道関係者殺害と酷似していた。

 実は昨年7月にも職場に向かう途中のラジオ局員が射殺された。発生からほぼ1年近くが経過したが、依然として誰も逮捕されていない。

 1月にパラワン州で起きたラジオ局員殺害事件では、司法省検察局が、主犯とされる元同州知事ら6人を証拠不十分で不起訴処分にした。これは報道関係者殺害阻止に向けた取り組みへの大打撃となった。なぜなら、実行犯として逮捕された犯人による自供に基づいた送検だったからである。

 報道関係者の殺害事件多発について、国民の忍耐はそろそろ限界に達している。現政権発足から1年近くが経過した現在、政府は犠牲者遺族への哀悼の意を表明し、迅速な捜査を国家警察に指示する以上の対策を実施しなければならない。

 まず第1に、報道関係者殺害事件が起きた地方を管轄するトップの警官を即座に解任する必要がある。それは事件防止に向けた国家警察全体の危機感を高めるため。

 第2に、ラジオ局員殺害事件について地元政治家の関与を徹底的に捜査すべきである。

 しかしこれらは、権力の監視という独立機関としてのメディアの役割が前提になる。報道関係者が自身の報道が原因で殺害され続ければ、この役割は永久に果たされることはないだろう。殺害されたオレア氏の妻は素朴な疑問をこう投げ掛けた。「誰も不正を公にできなければ、世の中はどうなるだろうか」(17日・インクワイアラー)

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