「日刊まにら新聞」ウェブ

　２０１２年12月下旬、ルソン地方カビテ州ダスマリニャス市で、新倉英雄さん＝当時(61)、神奈川県＝が射殺された事件で、殺人罪に問われた新倉さんのフィリピン人妻ら５人が殺人罪に問われた裁判は、公訴棄却、全員釈放という結末となった。捜査の違法性などを理由にした公訴棄却は、実質審理に入ることなく裁判手続きを打ち切る決定で、検察側の不戦敗を意味する。その要因になったのは、自供に頼った捜査と「証言重視、物証軽視」の傾向が強い比の刑事裁判制度。公判開始後、自供内容を翻して起訴事実否認に転じ、さらに捜査の違法性を争点にした比人妻らに対し、警察・検察側は、自供内容を裏付ける証言や捜査の適法性を立証する証人を確保できず、比人妻らの主張を覆せなかった。