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「中国船活動、1年で倍増」 スカボロー礁で政府高官・専門家

2025/5/7 政治
基調講演を行ったアニョ大統領顧問(国家安全保障担当)=6日

南シナ海スカボロー礁について、比政府高官・内外の専門家が議論。「中国船活動は1年で倍増」

比外交コンサルティング企業「ADRストラトベース」は6日、西フィリピン海(南シナ海中で比が権益を主張する海域)の中で、比中の緊張激化の中心の一つになっているパタナグ礁(英名スカボロー礁)に関するオンラインフォーラムを開いた。フォーラムには、アニョ大統領顧問(国家安全保障担当)や国家安全保障会議のマラヤ報道官も参加。内外の専門家と、同礁で中国船の急増する現状と対応策について公開の場で意見を交換した。

 ▽外交強化で中国に対応

 アニョ大統領顧問は基調講演の中で、同礁に関するマルコス政権の政策についてについて、「中国による不法な権益主張に対抗するため、①領土一体性の堅持②経済的利益の保護③地域の平和の促進――の3本柱を比の国益として、国家安全保障政策(2023~28年)の中に明記している」と説明。

 「比海域法の実施、防衛・海洋法執行能力の強化を通じ、領海侵犯を予防するとともに、海洋・空域状況把握を確立し、非常時の計画の準備をしている」とした上で、「われわれはこうした防衛能力を、外交上の戦略的パートナーシップや同盟関係の活用によって補強し、西フィリピン海への実効支配を取り戻すことを目指す」と述べた。その際のスライドには、昨年7月に比日政府が訪問部隊間協力円滑化協定(RAA)に署名した写真が映し出された。

 ▽中国船活動が倍増

 南シナ海の船舶動向の監視・分析を行うスタンフォード大のレイモンド・パウエル研究員(米空軍退役大佐・元在外武官)は、船舶自動識別装置(AIS)による中国海警局船・民兵船の活動動向を報告。スカボロー礁周辺で23年5月~24年4月の12カ月、計57隻の海警船・民兵船が約72万回のAIS発信をしたのに対し、24年5月~25年4月の期間では、計78隻の海警船・民兵船が約157万回の発進を行い、活動量を2倍以上に増やしたと報告。特に過去12カ月では活動が比本土に面する東側に活動が集中しているとした。

 また1日の中国船観測数をみると、23年は3~4隻が通常だったのに対し、25年以降は9~11隻展開しているのが通常となっていると報告した。

 一方、それに対する比沿岸警備隊(PCG)と漁業水産資源局(BFAR)の船舶の活動は、23年5月~24年4月で計7隻、約5万回のAIS発信と中国に比べ圧倒的に少なかったが、24年5月~25年4月には計11隻21万回のAIS発信と約4倍に活動を増やしていると報告。その一方で、「2年前とは異なり、過去12カ月比公船はスカボロー礁から25カイリまでしか接近できないのが常態化している」と指摘した。

 ▽軍事化がレッドライン

 それに対し、国家安全保障会議のマラヤ報道官は、「われわれも同様の状況と把握している」とした上で、「バホ・デ・マシンロック(スカボロー礁)はこのエリアのフラッシュポイント(紛争の火種)だ」と明言。その上で、「そうであっても、われわれは同礁がフィリピン領土だということを主張するため、より多くの船舶・航空機の派遣をひるまずに行う」と宣言した。

 また、中国が同礁に昨年11月、一方的に領海基線を宣言したことに触れ、「これは法律戦の一部。また偽情報の拡散を含む情報戦もメディアを通じて行っている」と指摘。「国際法上同礁が比領土なのは明らか」とし、「現在は中国船がプレゼンスと活動を増やしているだけだが、もし、中国が同礁に人工島造成したり、軍事化を行ったら、これはフィリピンにとって『レッドライン』となる」と踏み込んだ。

 フィリピン大のバトンバカル教授(国際法専門)は、「中国は同礁の実効支配を示すために攻撃的・挑発的な行動を強めているが、それは、法的観点から言えば、全く中国の立場を高めない」と指摘。「比はフィリピン植民地時代から同礁に行政権・管轄権を行使しており、それは米植民地時代、そして独立後まで引き継がれている」と解説した。

 中国共産党政府による同省の権益の主張については「1994年にあるドイツ人に対し、同礁におけるアマチュア無線の免許を交付した。それ以降、中国による威圧が始まり、2012年には占拠するに至った」と経緯を説明。その上で、「威圧による主権の侵害は国連憲章に反する。中国が力によって実効支配を強化しようとするほど、それは不法な主張であることを示すだけだ」との見方を示した。

 ▽妥協は危険

 国立オーストラリア大国家安全保障学部のジェニファー・パーカー専門家(退役海軍中佐)は「中国の振る舞いは欧州や中東でわれわれが目撃しているものを同種のものだ」と指摘。「バトンバカル教授には基本的に同意するが、2025年中に世界中の注目が様々なことに分散するのに乗じて、中国がどういう行動を取るかが心配だ」と述べ、中国の実力によるさらなる一方的な現状変更が近く発生するリスクに懸念を表明。

 「比中両政府に妥協点はあるのか」という参加者からの質問には、「国際法が規定していることについて妥協をおこなうことは、その悪影響が世界中に拡散する危険が伴う」と明確に反対し、「米国を含む同志国からのより強い意思表明によって、中国の行動を抑止することが必要だ」と強調した。 (竹下友章)

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