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7月13日のまにら新聞から

日米が支持表明 比は対中批判なし

[ 1179字|2023.7.13|政治 (politics) ]

中国の主張を全面的に退けた南シナ海仲裁裁判所の判断が下されてから7周年

 南シナ海の権益を巡る中国の主張を全面的に退けた2016年の南シナ海仲裁裁判所の判断が下されてから12日で7周年を迎えた。同判断を「効力のない紙切れ」とする中国が南シナ海の実効支配を強化する中、日米両政府は判断の法的拘束力を認め、それに従った行動を取るよう求める声明を出した。

 米国務省は米時間11日に声明を出し、「仲裁裁判所は1982年採択の国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、比の排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を含む中国の拡張的な権益主張を退けた。この判断は最終的であり、かつ当事国である比中2カ国に対し法的拘束力を有する」と指摘。

 米国はこの認識を同国の外交上の立場として2020年7月12日に「再確認」したとし、中国に対し①自国の海洋権益の主張を国際法に適合させる②比が自国のEEZ内で行う合法的な活動に対する継続的な嫌がらせをやめる③海洋資源に関する沿岸国の探査、開発、保存および管理に関する主権的権利への侵害をやめる④同地域で各国の航行、上空飛行の自由に干渉しない――ことを強く要請した。

 林芳正外相も談話を出し、「仲裁判断を受け入れないという中国の主張は、UNCLOSをはじめとする国際法に従った紛争の平和的解決の原則に反しており、国際社会の基本的価値である法の支配を損なう」と指摘。判断に従い紛争を平和的に解決することに強い期待を表明した。

 その上で「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することは大小を問わず全ての国家の利益となる」とし「一貫して仲裁裁判に従い南シナ海問題の平和的解決に取り組む比政府の立場」を高く評価した。

 さらに「南シナ海におけるUNCLOSと整合的でない海洋権益の主張」に反対するとともに、「現場の状況」に深刻な懸念を表明。力や威圧による一方的な現状変更の試みに「強く反対する」とした。

 ▽判例の拘束力は

 比のマナロ外相は声明で、「この判断により、比の海洋権益には議論の余地がないという確信のもと、新たな道を歩むことができるようになった」とし、同判断を支持する国が増加していることを歓迎したが、日米と異なり中国を批判する内容はみられなかった。一方で、日米が仲裁判断の拘束力の対象を訴訟当事国である比中に制限しているのとは対照的に、「この判断が全ての国家の役に立つ道しるべとして存在する」と述べ、判例としての国際法発展への貢献に言及した。

 2016年判断は、台湾が実効支配する南沙諸島最大の島で、郵便局・病院など生活インフラや原生林もある太平島をEEZの起点にならない「岩」と判断。この判断を判例としてUNCLOSの解釈に採用すると、日本の沖ノ鳥島など太平島より小規模な海洋地勢に各国がEEZを設定していることに矛盾が生じることを中国側は指摘している。(竹下友章)

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