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11月3日のまにら新聞から

保障されない人権 万聖節と貧困問題

[ 659字|2014.11.3|社会 (society)|新聞論調 ]

 「首都圏ナボタス市の公共墓地は深刻な貧困地区にある。泥の中でどくろが横たわっている」。これは10月28日に英タブロイド紙に掲載された写真説明だ。記事の見出し「スラム地区の墓地で遊ぶフィリピンの子供たち」を見れば内容は一目瞭然だ。

 黒い土と山積みのゴミの接写写真。積み上げられた箱形の墓の横に、ひびの入った頭がい骨が写っている。写真に写ったほとんどの人がはだし、もしくは薄っぺらなゴム製サンダルしかはいていない。

 ホラー映画よりも悲惨なこのような光景は、首都圏の公共墓地で日常的に見られる。墓地に暮らす人はごみを集め、墓堀りや墓の手入れをして生計を立てている。他のスラムと同じく、彼らは不衛生な環境での暮らしを強いられ、就業や教育の機会から遠ざけられている。

 万聖節の時期には毎年、この問題が国内外のメディアで注目される。しかし、憤慨するのもつかの間だ。翌年の万聖節まで、この問題は忘れ去られるのが恒例だ。

 政治は最貧困層に対して最低限の生活を保障すべきだ。国連の世界人権宣言はすべての人が「健康と福祉のために十分な生活水準を確保する権利」を有すると明示している。比政府は人権をどのように解釈しているのだろうか。全国にまん延している貧困は国家の恥だ。

 比政府の国連ミレニアム開発目標で、極度の貧困に暮らす人口の割合を1991年の33・1%から、2015年までには12・6%に削減させることを目標に掲げている。果たして実現できるのか。(10月30日・スタンダードトゥデー、ジェニー・オルトゥエステ氏)

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