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7月16日のまにら新聞から

MILFの「二枚舌」

[ 682字|2007.7.16|社会 (society)|新聞論調 ]

国軍部隊待ち伏せ攻撃

 イスラム系武装勢力がどう主張しようと、国軍部隊への待ち伏せ攻撃が同勢力と政府の和平交渉の進展を妨害したのは明らかだ。海兵隊部隊は十日、拉致されたイタリア人神父がバシラン州ティポティポ町に連行されたとの情報を基に、バシラン島内でイスラム過激派、アブサヤフの行方を追っていた。その際、同部隊は急襲を受け、兵士十四人が殺害され、うち十人が首を切り落とされた。

 当初はアブサヤフの犯行とみられたが、イスラム急進派、モロ・イスラム解放戦線(MILF)が十一日、「領域内に入った海兵隊を攻撃した」と発表、攻撃の事実を認めた。今回の待ち伏せ攻撃は、拉致事件の「真犯人」MILFの過激派が和平交渉の決裂を懸念し、神父の身柄をアブサヤフに引き渡そうとしているという情報が流れる中で起きた。

 バシラン島は、二〇〇二年の第一回比米合同軍事演習バリカタンによって、アブサヤフの支配から解放されたはずだった。〇六年暮れにはカダフィ・ジャンジャラニ最高指導者らのアブサヤフ幹部が相次いで殺害された。アブサヤフの残党が同島に戻っていたとしたら、それは和平交渉を巧みに利用するMILFが、アブサヤフおよび東南アジアのテロ組織、ジェマ・イスラミヤ(JI)に手を貸している何よりの証拠だ。

 和平は高くつくが、武装勢力が本当にその実現を願うのであれば安いもの。問題はMILF側の本心が当初から疑わしかったことだ。MILFがバシラン島を「自派領」としたことは過去にない。今回の待ち伏せ攻撃でMILFへの疑念が一層強まった。政府はMILFの「二枚舌」にだまされてはならない。(12日・スター)

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