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4月20日のまにら新聞から

米誌「影響力のある100人」 マルコス大統領を選出

[ 1078字|2024.4.20|社会 (society) ]

米タイムス誌がマルコス大統領を今年度の「世界で最も影響力のある100人」に選出。大統領府は歓迎、反マルコス団体は批判の声明

 米タイム誌が発表した2024年版「世界で最も影響力のある100人」にマルコス大統領が選ばれた。同誌は毎年、政治や芸術、科学などの分野で活躍する人物から独自に選定しており、日本からはアニメーション映画監督の宮崎駿氏や社会学者の上野千鶴子氏らが選ばれた。

 19日付英字紙インクワイアラーによると、マルコス大統領の選出は、これまでにフィリピンから選ばれた故ベニグノ・アキノ元大統領(2013年)、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領(2017年)に次いで3人目。また、故コリー・アキノ元大統領も1987年に同誌の「今年の女性(ウーマン・オブ・ザ・イヤー)」に選ばれている。

 同誌はマルコス大統領の選出理由について、「マルコス家のイメージ修復に務め、コロナ禍後の比経済の復興に尽力し、国際社会で南シナ海における中国の進出に対峙していること」を挙げている。また、「テクノクラート(技術官僚)を政府に配置し、コロナ後の経済を安定させ、比を世界の舞台に押し上げた」と評価した。

 しかし、「超法規的殺害や報道への攻撃がまだ続いている」とした上で、「(マルコス大統領は)家名を修復することでこの国を作り変えようとしている」と分析した。また、「2022年の大統領当選は、ソーシャルメディアの賢明な操作でマルコス家の(負の)遺産を体裁よく塗り替えることに成功したからだ」と皮肉も交えて紹介している。

 大統領府報道班は18日、声明を発表し、マルコス大統領が「影響力のある100人」に選ばれたことは「国益と国民の福祉を何よりも重要視している大統領のリーダーシップに光を当てた」として歓迎した。

 ▽疑問のある選出

 一方、市民団体「マルコス復活を阻止するキャンペーン」(CARMMA)は18日、選出には疑問が残ると批判する声明を出した。

 同団体はテクノクラートを政府に配置したという評価について、前マルコス政権期の政策だったがテクノクラートに依存することで「高くつくものの反庶民的な事業が繰り出されることになった」と分析したほか、コロナ禍後の経済復興に努めたという評価に対しても「食品を中心とする物価高騰や失業率の高まり、医療・健康分野など社会サービスの自己負担増」などが進み、国民を苦しめていると反論した。

 さらに南シナ海での中国との対峙についても、「米軍によるプレゼンスの強化と米軍需品の国内備蓄拡大を許し、中国軍による比への攻撃を誘発するように仕向けている。まさに、国民の利益を阻害する方法で比を世界の表舞台に引き上げている」と指摘した。(澤田公伸)

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