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6月15日のまにら新聞から

日米と連携を 中国の実効支配拡大

[ 738字|2015.6.15|社会 (society)|新聞論調 ]

 植民地支配をめぐるフィリピンの複雑な歴史は、独立記念日にも反映されている。1898年、アギナルド初代大統領が独立を宣言してから今年で117周年を迎えるが、日米の植民地時代を計算に入れると、正確には独立してから72年しかたっていない。

 独立の宣言文が読み上げられる1カ月ほど前、アギナルドは亡命先の香港から米国の艦船に乗って比への帰国を果たした。しかし、政治思想的指導者のマビニはその独立に疑問を呈す。それは、米国が米西戦争後のパリ条約によって比を獲得したためだ。かくしてアギナルドは米国に宣戦を布告することとなった。

 時間軸を現在に進める。

 ボクシングの国民的英雄、マニー・パッキャオの試合ほどに国民の関心を集める出来事がないこのご時世において、中国の実効支配拡大は、比の主権を脅かす中国の行動パターンとして認識され、国民の注意を引いている。そして今、比国民の態度も変わりつつあるようだ。弱い者いじめともとれる中国側の行動に対し、深まった失望はある種の憤りへと形を変えた。

 中国との戦争を望む国民は誰一人としていない。比国民を結びつけるつながりは無数に存在しているが、新たな超大国に対する比政府の立場は脆弱なままだ。このため、同盟国である米国からの軍事的支援をはじめ、比の軍事態勢を支援する日本などの国々とも防衛面で緊密な関係を築き始めている。

 そして今後数年は、比の対中政策に関して日米と見解を共有できるだろう。とはいえ世界経済に君臨する三大国家もまた、複雑な利害関係にある。中国の実効支配拡大に対し、比政府は日米の支援を受けながら適正なバランスをとって対処しなければならない。それが真の独立の価値を示してくれるだろう。(12日・インクワイアラー)

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