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10月8日のまにら新聞から

電気自動車

[ 1456字|2013.10.8|社会 (society) ]

電動トライシクルで日系企業初の専用ナンバープレートを取得

ビート・フィリピン社が開発した電動トライシクルと中島徳至社長=7日午後5時半ごろ、首都圏マカティ市で写す

 日系電気自動車ベンチャー企業、ビート・フィリピン(本社・首都圏マカティ市)は7日午後、同市で記者会見を開き、開発した電動トライシクル(サイドカー付きオートバイ)を公開した。開発に当たり、同社は日系企業で初めて運輸通信省陸運局(LTO)の認可を得て、電気自動車専用のナンバープレートを取得。アジア開発銀行(ADB)とエネルギー省が共同で進める電動トライシクル普及事業で、ADBが実施する競争入札を勝ち抜き、受注を狙う。

 「(事業を通して)持続可能な社会を作っていくという目標を実現したい」︱︱集まった報道陣を前に中島徳至社長は同社の比における役割をこう話した。

 同社の電動トライシクルの最大定員は、運転手を含めて7人を想定している。自宅のコンセントでも充電でき、一回の充電(約2時間)で最大50キロの走行が可能となる。

 比では2011年、首都圏マンダルーヨン市で試験的に電動トライシクルが導入されたが、モーターの寿命や洪水などといった理由でこれまでに半分が故障し使用されなくなった。こうした事例を受け、同社では洪水・震動・防塵・積載量・高温といった問題への対策を研究。長期間使用しても壊れにくい車両を目指した。

 中島社長は「これから実用化される電気自動車は、5年、10年走り続ける車を製造できる会社が車両を提供していかなければならない。せっかく電気自動車を導入しても、故障しやすいために(電気自動車普及の)火が消えてはならない」と力を込めた。

 ビート・フィリピンは大手船舶用電気器メーカー、渦潮電機株式会社(愛媛県今治市)の100%出資を受けて2013年3月に設立。自動車メーカーの技術者や電気自動車に携わってきた人材が集まり、比での電動車両の普及を目指している。

 今回の電動トライシクルには、4輪車の技術が多く生かされている。電動トライシクル自体の重量は450キログラムほど。総重量1トンの負荷に耐える。

 モーターには高性能の交流式モーターを採用した。現在、比で利用されている電気自動車は直流式モーターを使用している。直流モーターは安価だが、総重量が上がるとブレーキが効きにくくなり、モーター自体の寿命も短い。ブレーキ制御、寿命の問題を交流式でクリアできたという。

 車両制御にも独自に開発した技術を導入、特殊コンピューターにより車両が常に最適な状態を維持できるようにした。

 また同社は、日本の大手通信企業、ソフトバンクと8月に提携合意し、モバイルネットワークを活用した電動自動車の管理・日額課金システムを構築する。同システムにより、トライシクルのリース料管理や、故障したトライシクルの位置を把握し修理スタッフを派遣したり、強盗被害に直ちに対応するなど、システムを利用した多様なサービスの提供を構想している。

 高性能技術の導入によるコスト高について、同社は運行者の負担につながらないよう、販売価格を調整していく予定。充電費用は現行のトライシクルにかかるガソリン代より安価に抑えることができると予測している。

 中島社長は「自動車メーカーは車ありきの社会構築を目指してきた。これからは、まず社会ありきの車を作っていかなければならない」と抱負を述べた。

ADBとエネルギー省は、全国のトライシクル350万台のうち、2016年までに10万台を電動化する。この計画の入札にはビート・フィリピンを含めた4社の外資企業が参加を表明している。(加藤昌平)

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