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2月18日のまにら新聞から

記憶を胸に前進を

[ 740字|2013.2.18|社会 (society)|新聞論調 ]

マニラ戦と比日友好

 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の友好協力40周年事業として、首都圏マニラ市のイントラムロス内で上演された香川県の有形・無形文化財「直島女文楽」。日本で唯一、女性だけで演じられるユニークさに加えて、イントラムロス内にあるマエストランサ公園という公演場所も意義深かった。

 パシッグ川に近い同公園内では近年、スペイン植民地時代に築かれ、太平洋戦争で破壊された「アルマセネス城壁」の遺構が見つかった。この貴重な史跡は日本政府の支援で修復され、新たな観光名所、住民の生活の中心地として整備されつつある。観光省も、城郭内を違法占拠する住民の移転や、外国人観光客から法外な案内料を取る「無免許ガイド」の排除などを進めている。

 女文楽の公演が行われた2月は、太平洋戦争末期の1945年、米軍によるマニラ解放戦が始まった月でもある。そして、戦後長らく「比日友好月間」ともなり、比国内では「フィリピン人約10万人の命を奪い、イントラムロスを廃虚に変えたマニラ解放戦と同じ月に、比日友好を祝ってよいのか」、「(比日友好と戦争被害という)相対立する行事と史実に関連した式典などを同じ月に行ってもいいのか」などの議論が続いてきた。

 個人的には、平和を希求する気持ちを失わず、戦後の日本、そして文楽を上演した女性のような日本人との友好は、解放戦の犠牲者となった同胞をないがしろにする行為ではないと思う。

 解放戦から既に68年の歳月が過ぎ去った。もはや、犠牲者の正義のため、日本人に対する報復を求めるべきではない。われわれに求められるのは、死傷者のことを思いながら前へ進み、戦争で破壊されたイントラムロスなどに再び命を吹き込むことだろう。(12日・インクワイアラー、リナ・ダビッド氏)

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