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9月5日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 671字|2011.9.5|社会 (society)|ハロハロ ]

 南ルソンのラグナ州に国民的英雄、ホセ・リサールの生誕地として知られるカランバ市がある。筆者はそこに居住するのだが、市に昇格した10年前から市内に中心街と呼べる地域が見当たらなかった。そこに1年足らず前、「SM」が開店した。ヘンリー・シーが「Shoe Mart」(靴屋)の名称で創設した家庭用品を中心にした大規模小売店。それに150の小売店が同居して3階建てのモールで営業している。映画館もあり、野外には800台収容可能な駐車場。

 前置きが長くなったが、その近代的なモールで大きなスペースを占めるのがSMシューマート。中に入ると、これ以上音量を上げられないと思うほどの大きさで音楽が響いている。最初、思わず両手の人差し指で両耳をおさえた。筆者はショパンのノクターンだけを聴く音楽好きでは決してないが、「これが音楽を聴く音量か」と不快になる。だが、驚いたことに、「うるさいなー」といった表情の人は、客にも従業員にも誰一人見当たらない。

 この騒音を耳にして、すぐ思い出したのは1959年10月、共同通信記者としてルバング島残留日本兵の救出調査団に同行、初めて来比したときのことだ。同月22日夜、マニラ港から同島に向かう貨客船に乗った。「ブタやニワトリと同居で出港を待つが、船が出る気配はない。乗客は狭い船内に鳴り響く音楽を楽しんでいるだけだ。携帯ラジオの持ち主は、皆に音楽を楽しませてやろうと大きな音を出しているようだ」と記したメモが残っている。ガンガン鳴り響く音に対する比人の反応は、今も半世紀前と変わりがないようだ。(濱)

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