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5月23日のまにら新聞から

人命の尊さを再教育せよ

[ 722字|2011.5.23|社会 (society)|新聞論調 ]

有名記者の交通死事故

 道路の安全性について、特にケソン市の悪名高いコモンウェルス通りのそれに注目を集めるため、著名なジャーナリストのチット・エステラの命が犠牲になったのは悲劇だった。記者仲間や教授陣から、またフィリピン大学の教え子たちから慕われていた彼女のような人間がこんな残酷な事故で命を奪われた。最初のバスが彼女の乗ったタクシーのサイドミラーを破壊し、2台目のバスが致命傷となる一撃を背後から加えたのだ。

 両側18車線からなるこの大通りでは昨年1年間に2千件以上の交通事故が発生し、21人が死亡、6百人以上が負傷した。しかし、エステラを奪った事故ほどショッキングな出来事はなく、「キラー・ハイウエー」と呼ばれる道路状況を再認識させた。病院に運ばれる前に息絶えた彼女だったが、最後の一言は「なぜ?」という言葉だった。

 本来は文明の理想を体現したような秩序ある素晴らしいハイウエーという場所が、60キロの制限速度が課せられていたにもかかわらず、歩合制で乗客の奪い合いをするバスなどの公共交通機関の運転手たちによる傲慢なレース場と化していたのである。運転手たちの多くは長時間にわたる勤務で疲れた頭を覚醒させるために薬物を使用していることも分かっている。交通法規を知らない運転手も多い。さらにわいろを要求するだけで違法運転を取り締まらない交通整理員や警察の存在も無秩序化を補強してきた。

 首都圏開発局はスピードガンの設置や職員の大動員で速度取締りを徹底実施すると表明した。しかし、この殺人道路の問題を解決するためには、運転手や当局職員、乗客や歩行者も含めて、人命の尊さと文明、規律などの価値について再教育を施すことが必要だろう。(19日・インクワイアラー)

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