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4月4日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 795字|2011.4.4|社会 (society)|ハロハロ ]

 堪え難い悲しみや驚きの思いを日本語では「胸がつぶれる」「胸が裂ける」とか「胸がつまる」といった言葉で表現される。筆者は80歳を超える今日まで、幸い、そんな言葉を口にすることは一度もなかった。ところが3月11日、東北、関東地方で観測史上世界4番目の巨大地震が発生して、津波で民家も漁船もトラックもが押し流された。瓦礫(がれき)だけになった廃墟の町から人の姿が消えた。テレビ画面に映し出される悲惨な状況を眺めて、初めて胸の裂ける思いを実感した。

 同日午後6時49分、日本にいる家族、友人の安否を尋ね、無事を祈る最初のメールが私の携帯電話に入った。この国のテレビでも詳しく報道された翌日から、同じようなメールが相次いだ。送り主はいずれもフィリピンの友人や知人。商店街でも筆者が日本人だと知ると、同じように尋ねてくれた人もいる。妻も同じ経験をした。異国で、その国の人たちの温情、善意に触れることのできるうれしさを2人で味わった。妻の友達は家族の安否を気遣った後、「それにしても……」と、異口同音にあの大惨事の中で礼儀正しく、冷静さを保つ日本人を称賛したそうだ。

 「怒鳴り合いもけんかもない」「本当に強い国だけがこうした対応ができる」(ベトナム紙)、「めったに遭遇することがない英雄的行為」(シンガポールの英字紙ストレーツ・タイムズ)など、各国のメディアがこぞって危機的状況下でも礼儀と忍耐を忘れない日本人を褒めたたえている。英国のデイリー・ミラー紙(同)は「日本、みなさんは1人じゃない」、英国のインデペンド紙は「がんばれ日本、がんばれ、東北」、また韓国のソウル新聞は「深い哀悼の意を表します」と、いずれも紙面に日本語で異例の見出しをつけた。だが死者、行方不明者はすでに2万8千人を超えたという。痛ましい限りで言葉もない。合掌 (濱)

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