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10月25日のまにら新聞から

教訓は生きたか

[ 713字|2010.10.25|社会 (society)|新聞論調 ]

スーパー台風フアン

 スーパー台風フアン(13号)対策では、強い危機感を背景に、政府機関と民間が一つになってルソン地方上陸に備えた。気象庁は比較的信頼性の高い情報を規則正しく発信し、マスコミはその情報を精力的に報じた。教育省は気象庁やマスコミの情報を基に、休校措置に関する的確な判断を出して、子供たちを台風の風雨から守った。

 被災地では復旧作業が急ピッチで進められている。通信手段の問題やルソン地方北東部の遠隔地が被災したことから、政府は被害状況の全容をつかみ切れていないようだが、被災住民の生活再建を支援する上で、被害の全容把握とその分析が重要なことは言うまでもない。

 直撃を免れた首都圏やその他の地方も、台風被害とは決して無縁ではない。ルソン地方北部のコメどころ、イサベラ、カガヤン両州が甚大な被害を受けたためだ。しかも、10月は収穫期。国家食糧庁によると、10万トンを超えるコメが失われた可能性がある。コメや果物、野菜の産地として知られるヌエバビスカヤ州など隣接州も被災しており、その影響は今後、物価上昇という形で首都圏住民の生活を脅かすだろう。

 スーパー台風は去ったが、われわれは決して気を緩めてはならない。首都圏やルソン地方中部は2009年9月、台風オンドイの甚大な被害を受けたわけだが、悲劇から1年を経た現在も包括的な災害対策は策定されていない。

 さらに、首都圏の川や水路沿いには、掘っ立て小屋が再び建ち並び、被災住民の避難場所などに活用できるオープンスペースの確保も民間開発業者や資産家の「慈悲」に依存する状態が続いている。住民の生命と財産を守るべき警官の意識も絶望的なまでに低いままだ。(20日・インクワイアラー)

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