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10月18日のまにら新聞から

国家泰平への賭け

[ 714字|2010.10.18|社会 (society)|新聞論調 ]

反乱将兵らへの恩赦

 国軍出身のラモス元大統領は、前政権下で起きたクーデター未遂事件の反乱将兵に恩赦を与えた。これが功を奏してか、同元大統領の在任時の6年間に、反乱は起きなかった。恩赦を与えられた将兵の中にその後、上院議員に当選して政治家になった者もいる。一方で、若手将兵の一人はアロヨ前政権下で政権を揺るがす複数の企てに加わった。

 アキノ大統領は12日、ラモス元大統領に倣い、2003年に首都圏マカティ市で反乱を謀議した若手将兵らに恩赦を与える大統領布告を出した。この対象者には獄中から上院議員に当選したトリリャネス議員=元海軍大尉、クーデター罪などで起訴=も含まれている。上院議会は大統領の恩赦布告に賛成するだろう。

 同布告の賛同者は、同議員などの留置期間が長期に及んだことで、みそぎは済んだと指摘している。しかし今回の恩赦が「クーデター・ウイルス」の除去に役立つかどうかは不明である。この国の反乱者は、自らの行為の大義名分を最後まで貫き、反省の弁を口にしないのが特徴的だ。こうした姿勢は、反乱将兵が選挙を通じて高位に就くことにより助長され、国軍出身者が政治的問題に関与し続けることを保証してきた。

 今回の恩赦に賛成する者は、アキノ政権下では国軍が反乱を起こす理由はないと言う。しかし同様の主張が故コラソン・アキノ政権下でもなされてきた。早期の景気回復と民主主義の強化に取り組んだアキノ元大統領の努力は、7回に及ぶクーデター未遂事件で頓挫した。

 政治に口出しする国軍はプロとしての国軍の発展にとって健全な姿ではない。大統領はこの恩赦によって、泰平への賭けに出た。賭けが吉と出ることを願うほかない。 (13日・スター)

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