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9月20日のまにら新聞から

不本意な妊娠

[ 708字|2010.9.20|社会 (society)|新聞論調 ]

赤ん坊遺棄が示す現実

 出産後になぜ母親は赤ん坊を置き去りにし、捨てたのか。マニラ空港に到着したガルフ航空機内のトイレのゴミ箱から男の赤ん坊が見つかった。母親を特定する捜査が続けられる中、さまざまな憶測が飛び交っている。同便の出発地が中東のバーレーンであることから、母親は子育てという責任を負いたくなかった比人海外就労者(OFW)だった可能性がある。

 えい児の遺棄事件はこの国では珍しくない。もっとも、旅客機内では初めてだが、教会や児童養護施設の入り口付近に赤ん坊が置き去りにされているのはよくある。施設側が面倒をみてくれると信じて母親が置き去りにするのだ。旅客機内の遺棄事件以降も、首都圏マニラ市サンタクルスのごみ集積場からえい児が見つかった。

 旅客機内で見つかった赤ん坊の健康状態が良好だったのは、不幸中の幸いと言えよう。別の女性であれば、不本意な妊娠のために中絶を選択したかもしれない。

 えい児の遺棄現場として、母親たちの間ではパシッグ川が最も知られているようだ。教会前もよくある事例で、マラカニアン宮殿内のトイレで見つかったというケースも報告されている。

 母親が赤ん坊を遺棄するのは不本意な妊娠から逃避したいからである。十分な収入がなく、経済的に養育できない事情や、時には浮気を隠したいとの思いもあるだろう。

 しかし今回の事件は、母国を離れ、海外就労を余儀なくされるという比国特有の社会的事情を反映しているという指摘がある。さらに、避妊具使用による人口抑制、性に関する健康問題への女性の認識を高める必要性も同時に示している。この認識が広まれば、不本意な妊娠やえい児遺棄事件は少なくなるはずだ。(14日・スター)

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