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11月16日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 617字|2009.11.16|社会 (society)|ハロハロ ]

 「私の人生で最高傑作は孫たちの存在」。日本の著名な作家が、大手紙に寄せたエッセイの中でこう言い切っているのを読んだ。多くの読者を楽しませ、感銘させた秀作を多く持つこの作家はこれまで、エッセイで家族をはじめとする私生活をほとんど筆に乗せることはしてこなかった、しかし、「孫」という存在は特別のようで、このたった1行の文章の中に、「祖父」の同作家が孫たちに寄せる大きな愛情といつくしみの情がにじみ出ていた。

 このエッセイを読んでから数日後、友人のインドネシア人夫妻から「娘を見に来てください。インドネシア料理も用意しています」と書かれた電子メール招待状を受け取った。同夫妻に第一子が誕生したのは8月15日。招待状には「首はまだ座っていないが、目はもう見えています」ともあった。「会いに行きます」との返事を送ったが、実を言うと、彼らの娘に会う楽しみもさることながら、「新米ママ」を助けるためジャカルタから駆け付けていた「祖母」が作るインドネシア料理の魅力の方が強かった。

 約束の日、東京・足立区のアパートを訪ねた。出迎えた「新米ママ」に抱かれ、大きな瞳を向けてくれた赤ちゃんを一目見たとたん、何とも言えぬ感情がこみ上げた。誕生まもない、無垢(むく)の赤子が自身の「孫」にも思えるほどいとおしく感じられた。作家の「最高傑作」との言葉に納得した。と同時に、「祖母」の手になるインドネシア料理が一段とおいしく味わえた。(道)

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