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7月20日のまにら新聞から

真っ赤なうそ

[ 726字|2009.7.20|社会 (society)|新聞論調 ]

拉致事件の身代金支払い

 政府の主張とは裏腹に、イスラム過激派、アブサヤフが拉致した人質が解放される際、身代金は確実に支払われている。スルー州で起きた赤十字国際委員会の職員拉致事件で、最後の人質、ユジェニオ・バニ氏が解放されたが、政府は、同州のサヒドゥラ副知事が「たばこ代」5万ペソを渡したことにして真実を明らかにしないだろう。

 同副知事はなぜ、自分の金を支払うために長期間待つ必要があったのか。しかも、米中央情報局(CIA)のパネッタ局長とアロヨ大統領との会談が予定されている絶妙なタイミングでの解放だった。

 2008年6月に同州で起きた大手テレビ局の女性キャスターら4人の拉致事件では、同州インダナン町の町長が犯人に身代金を支払ったとされる。同町長は解放交渉に当たっていたが、全員解放された後、犯行グループの一員とみなされ身代金誘拐容疑で拘束された。金銭を渡したサヒドゥラ副知事は今回、問題にされなかった。アブサヤフ側に金を渡した罪は問われないのか。彼らの所在を知り、簡単に接触できた点をなぜ問い詰められないのか。

 副知事が容疑をかけられることはないだろう。それは、米CIA局長の比訪問に合わせ、現政権の統制力を証明する目的でアロヨ大統領から命じられたからだ。

 「善意で5万ペソを渡した」とする副知事の主張は、単なるたわ言にすぎない。バニ氏解放には必ず数百万ペソの身代金が支払われている。アブサヤフは無知ではない。彼らは米CIA局長の訪比を知っていた。そして、対テロ成果を誇示するため、アロヨ大統領が人質解放を望んでいることも分かっていた。もっと多額の身代金が要求されていたら、政府はそれにも屈していただろう。(14日・トリビューン、ニネス・オリバレス氏)

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