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4月7日のまにら新聞から

経済成長の障害

[ 690字|2008.4.7|社会 (society)|新聞論調 ]

頭脳流出問題

 二〇〇七年の国内総生産成長率が過去三十年間で最高を記録した。しかし、この経済成長の持続性には疑問が残る。比支援国は経済成長を称賛する一方で、汚職や所得格差、貧困問題が手つかずのままであることに懸念を示した。また、国際機関は汚職のまん延が外国投資の流出を招くと警戒している。

 そんな中、アジア開発銀行はこのほど、アジア域内での高度技術者不足が経済発展への新たな脅威になるとの見方を示した。流出が危ぐされる職種は会計士、航空操縦士、企業管理者、技術者、弁護士、医師、科学者、ソフトウエア開発者など。

 高度経済成長を続ける中国のような国であれば、技術者不足は単なる現象と理解できる。しかし、比の状況は異なる。投資不足により雇用創出が困難で、高度技術者が高給を求めて出国してしまうのだ。ここ数年では教師と医療技術者不足が特に顕著となっている。

 比総人口の一割は海外就労者で、その数は増え続けている。労働雇用省によると、昨年一年間で約百万人が就労のため出国した。彼らの年間送金額は百億ドルを超え、今や比経済成長の重要な要素だ。一方で、頭脳流出のつけは教育・医療分野で徐々に拡大している。教育水準の低下は、就職水準を満たさない卒業生を生み出しし、コールセンターでは人材不足が起きている。

 移民労働者は世界的な現象だ。先進国は特定の職種で、外国人採用を積極的に行っている。例えば比人看護師の需要は世界的にも高く、米国では比人教師がさまざまな科目を教えている。だが、開発途上国では流出した人材を埋める人材源がない。人材不足が経済成長率に影響するのも時間の問題だ。(4日・スター)

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