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10月29日のまにら新聞から

正義よりも政治

[ 707字|2007.10.29|社会 (society)|新聞論調 ]

前大統領への特赦付与

 罪に相当する刑罰が下されたのか。エストラダ前大統領は死刑制度が廃止される前なら略奪罪で死刑囚になっているかもしれなかった。代わりに、終身刑の一審判決を受けた。前大統領は無実を主張しておきながらアロヨ大統領から特赦という恩恵を受け、監獄に入れられることなく、自由に歩き回れるようになった。

 自身の罪を認めず、弾劾裁判の対象となった公職者に特赦を受ける資格があるのか。六年半に及ぶ不正蓄財裁判を担当した検察側はそう思っていないが、大統領の権限を行使されては仕方がない。特赦付与の合法性が問題になっても、前大統領を再び収監するのは練り歯磨き粉をチューブに戻すより難しいかもしれない。

 前大統領支持者らは「六年半も拘置生活を強いられ、もう十分だ」と思っているだろう。しかし、前大統領の拘置施設と同程度の快適な施設で拘置生活を送る囚人は皆無だということを忘れてはならない。

 大統領府は、国家統合と和解のために特赦を決定したと説明した。和解の前に正義が必要だと主張したのは誰だ。アロヨ大統領は、この国で正義の実現を目指すことの無益さを悟ったのかもしれない。前大統領が一生、監獄生活を送るとは誰も考えていないが、自責の念にかられるほどの刑罰を受けたと市民は思うだろうか。気が変わるかもしれないのに、現政権は公職を求めないとの前大統領の約束を考慮した。

 国民全員が特赦付与を予期していたが、特赦がこんなに早いとは誰も思わなかった。汚職疑惑がはびこる中、このタイミングでの特赦付与は、政治的延命をかけた適切さを欠く判断だと現政権への非難が始まることになろう。この国では政治が正義を踏みつけにする。(27日・スター)

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