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9月17日のまにら新聞から

見事な判決文

[ 728字|2007.9.17|社会 (society)|新聞論調 ]

公特裁の不正蓄財裁判

 国民が注視する中、公務員特別裁判所特別部が十二日、略奪罪に問われたエストラダ前大統領に判決を下した。結果は「有罪」で終身刑が言い渡されたが、前大統領側は判決全文の法廷内朗読を忌避した。二百六十二ページに達する判決文には、有罪理由が明快かつ率直に詳述されていただけに、朗読忌避は残念だった。

 公特裁の三判事による判決は見事だった。膨大な証言、資料の中から、「事実」に基づいた証拠を選び出し、さらにそれらを法律に照らし合わせる作業を積み重ね、前大統領への「有罪」を導き出した。それだけに、ジンゴイ上院議員が実父である前大統領の有罪判決に憤り、違法賭博フエテン関連で不満を口にしたのは情けなかった。

 その発言は妥当性を欠いていた。そもそも略奪罪とは、公務員がその地位、人間関係、影響力を悪用し、蓄財を違法かつ組織的に行い、国家・国民に損害を与えた場合に適用される罰則で、マルコス政権時代にはびこった職権乱用を教訓に修正、制定された。違法賭博を前大統領が悪用した今回のケースはまさに略奪罪に相当する。

 前大統領が同裁判を「政治裁判」と批判するなど、現、前大統領両陣営からさまざまな圧力をかけられながらも、公特裁の三判事は証拠に基き法律を厳正かつ適切に解釈、結論を出した。三判事はジンゴイ議員ら二被告を無罪としたが、それは有罪と断じるだけの確たる証拠に欠けていたからだ。対照的に三判事は、公営賭博運営会社の株売買に絡む仲介料(一億八千九百万ペソ)では、前大統領を「クロ」と断じた。 

 今回の判決文は質的に優れ、その上、計算され尽くされ、人間味さえ感じられる。そこには裁判所が民主主義実践の重要な一翼を担う姿が表れている。(14日・インクワイアラー)

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