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9月3日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 536字|2007.9.3|社会 (society)|ハロハロ ]

 このところ、首都圏南郊に広がるラグナ州の草原に風と戯れるススキの穂波が目立つ。タガログ語でススキは「タラヒブ」。日本のススキと同じイネ科だが、サトウキビの仲間なので、高さは三・五メートルにも及ぶものがある。背丈と穂の形に違いはあるが、草原で波打つ白銀の穂に、つい、日本の秋を重ね合わせてしまう。

 「薄が原」「芒が原」。使われる漢字は異なるが、日本に「ススキが原」は何カ所もあり、原っぱのどこにでもススキはある。「山は暮て野は黄昏の芒かな」(蕪村)。そして、印象に残るのはなぜか夕方のススキ。それも辺りに赤トンボが群れる情景が目に浮かぶ。その赤トンボがラグナの草原でも舞い出した。

 「夕焼け小焼の赤とんぼ/おわれて見たのはいつの日か」(三木露風)——。ススキ、赤トンボ、それに夕焼け空。これは日本の秋の原風景かもしれない。雨雲が遠ざかって青空が広がる夕暮れ時。塊になってなびく「ひつじ雲」が夕日を受けて赤々と燃える。「わたつみの豊旗雲に入日見し……」(天智天皇)にある豊旗雲がこの雲で、学名は「高積雲」。南ルソンでも、これからしばらくの間、日本の秋と同じ自然の営みが楽しめそうだ。 (濱)

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