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9月3日のまにら新聞から

さらに遠のく和平

[ 703字|2007.9.3|社会 (society)|新聞論調 ]

シソン容疑者逮捕

 比共産党の最高指導者、ホセ・マリア・シソン容疑者が亡命先のオランダで逮捕された。オランダ政府の「国内法に違反した疑いのある人物は何人であっても逮捕の対象となる」という言い分はもっともであるが、逮捕には「なぜ、今か」という疑問を抱かざるを得ない。

 逮捕容疑となった事件は三︱四年前、オランダから遠く離れた比で起き、シソン容疑者が指示したとされる殺人の実行犯はいまだ比で逮捕されていない。にもかかわらず、殺人を指示したという同容疑者が逮捕されたのだ。背景には、比政府の強い働き掛けがあったに違いない。

 今後、オランダの検察当局は比国内で集めた証言・証拠を使って殺人教唆罪の立証を進めると予想される。ここで同当局関係者が注意しなければならないことは、他の事件でさまざまな証拠をでっち上げてきたアロヨ現政権の過去である。国家警察と国軍は内なる犯罪者を隠すために平気で証拠・証言をねつ造するのだ。特に今回は、共産主義者の天敵、ゴンザレス大統領顧問(安全保障担当)がオランダ当局との交渉などに重要な役割を果たしたとみられる。

 シソン容疑者逮捕を受け、アロヨ大統領は「共産反政府勢力との和平合意が近づいた」と発言したが、これは大きな間違いである。交渉すべき相手はあくまでシソン容疑者ら共産党幹部であって、比国内で活動する武装勢力などと交渉しても決して和平は訪れない。

 アロヨ政権は現在、少なくとも三つのイスラム反政府勢力と相対している。シソン容疑者逮捕により、新人民軍(NPA)は一層厳しいゲリラ戦を挑んでくるだろう。このままでは、国軍兵士の墓が増えるばかりだ。(30日・トリビューン) 

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