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5月28日のまにら新聞から

貧困と戦う警察官たち

[ 705字|2007.5.28|社会 (society)|新聞論調 ]

内職警視の悲劇

 命を的にすることを要請される仕事にもかかわらず、警察官の給与はあまりにも妥当さを欠いており、ボカルボス警視は相乗りタクシーの運転手をして収入を補わねばならなかった。同警視は二十三日夜、ケソン市コモンウェルス通りを走行中、乗客の中から五人組が現れ、「手を上げろ」と命じた。警官には本来、非番などはない。同警部は銃を抜いたために、強盗団に射殺されてしまった。    ボカルボス警視は警官一家の出で、マカティ署の副署長に任命されたばかりだった。

 国家警察では、同警視のように内職をするのは珍しくない。初任給は最低賃金より少し多いだけだ。情けない給与が国家警察に汚職をはびこらせる。葬儀の付き添いをやる警官もいるし、政治家のボディガードは特別手当が出るので好かれる。小さな商売をやったり、ボカルボス警視のようにタクシー運転手もする。        

 国家警察はしばしば腐敗と無能ぶりをからかわれるが、安い給与、長時間勤務、危険な職務でありながら警察官は仕事を愛し、働き続ける。昨年、内務自治省が行った調査では、多くの警察官が貧困ライン以下であった。普通の警察官は射撃の腕を普段から磨いておくための銃弾を買う金すらないのだ。警官は定年退職するまで安月給に愚痴をこぼす。ところが公務員保険機構の加入者が最近、年金の受給が三カ月も遅れたと訴えたと伝えられた。

 ともあれ普通の警官は定年後のことなど考えている余裕はない。犯罪と戦うかたわら、家計の帳尻を合わせるため、毎日を生き延びるため、何でもやらねばならないのだ。そして、ボカルボス警視のように、定年退職の日を迎えられない警官もいるのである。(26日・スター)

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