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5月7日のまにら新聞から

仕事あれども人手なし

[ 716字|2007.5.7|社会 (society)|新聞論調 ]

海外就労者問題の裏側

 メーデー(五月一日)を迎えて、「賃金水準の適正化」「労働者の福祉」がスローガンとなる。賃金が上がれば労働意欲も向上するので、両スローガンは決して悪いわけではないが、労働事情の憂慮すべき現状、つまり「熟練労働者不足」の問題にも関心を寄せるべきだ。信じられない話だが、この国では今、熟練労働を必要とする職場で深刻な人手不足が生じている。その原因は①より高い賃金を求め流出を続ける数百万人の海外就労者(OFW)②教育の質的低下による国内に残された労働力の質的低下︱︱の二点に集約される。

 人手不足の典型的な職場がコールセンターだ。応募者は多いものの、電話での問い合わせに即答できるほどの英語力を身につけた者が少ないのだ。また、看護師、医師その他の医療技術者たちがOFWとして海外へ流出するため、全国の民間病院の中には、人手不足から閉鎖を余儀なくされる所さえ出ている。医療部門の人材不足は危機的状況に陥っている。

 このほか、航空部門では操縦士、機関士、整備士らが相次いで海外流出しているほか、労働雇用省の最新発表では、鉱山、ホテル・レストラン産業、造船、建設、保健、情報などの諸部門でも人手不足状態が起き始めている。こうした深刻な現状の裏にあるのがOFW問題だ。OFWは八百万人にも上り、その職場も世界各地のホテル、病院、情報、海運などさまざまな部門に広がっている。教育部門では数年前から、優秀な英語教師の不足が顕在化している。

 こうした状態が続けば、この国から優秀な医療従事者が姿を消し、教育水準は低下の一途をたどりかねない。優秀な人材を世界に輩出している国で、人材不足が懸念されるとは何とも皮肉な話である。(1日・スター)

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