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4月9日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 502字|2007.4.9|社会 (society)|ハロハロ ]

 昔、バンコクで笑顔の清々しい日本人の大男に紹介された。タイの僧院生活をしばらく経験して娑婆(しゃば)に出て来たばかりの研究者だという。貧乏書生とあって、私の上司が時々、めしを食わせていたのだ。猛然と食い、「蚊に血を吸われても殺せない」修業生活の苦悩を朗らかにしゃべった。体ばかりでなく精神も大柄に育つ予感は十分だった。

 最近、新聞を読んでいてうれしいことがあった。あの大男、文化人類学者の青木保氏が「文化庁長官」に任命されていた。東南アジア学などいまもって流行らないが、青木さんの学業はタイから始まって普遍的な人類の元型を探るに至った。国際級の学者である。東南アジア諸国と日本の文化的交流に大きな味方が現れたという気がした。

 フィリピンで日本文化の影は薄い。フランス大使館は毎年、この時季、ワイン試飲からサーカス、ストリートダンスまで多彩な文化イベントを仕掛ける。ところが日本政府ときたら自国民にもなじみの薄い古典芸能の紹介にかじりついている。日本のアニメや「邦楽」が若者の間に浸透しているのに誇るべき文化とは思わないのだろう。青木さんなら文化交流も少しは変わるかも知れない。(水)

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