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3月20日のまにら新聞から

脅かされる文民統治

[ 662字|2006.3.20|社会 (society)|新聞論調 ]

軍報道官の発言問題

 キソン国軍報道官の「軍は国を支える支柱で、もしこれが壊れれば国家は崩壊するだろう」との発言は誇大妄想に近い。この発言は精神異常者でなく、黒い政治や汚職にまみれた国の軍報道官から出てきたのだ。これは民主主義の重要原則「軍に対する文民統治」を脅かすものに聞こえる。

 現在の軍高官らの大統領への忠誠は疑う余地がない。政財界から今の政治危機に対し軍介入の要請があってもおかしくはないが、国軍は団結している。軍高官の一部に、政治家らから中立の嘆願があったのだろう。それは尊重されるべきだ。確かに民衆蜂起などが懸念される限り軍は要になりうるが、それは彼らが神のように振る舞えることを意味するものではない。

 最近の出来事を見ていると、軍は、国民の主権や自由を犠牲にすることに躍起になっているように映る。大統領府に近い議員でさえも軍に対し口をつぐむよう述べた。しかし、文民統治の象徴である大統領府があまりにも弱すぎるため、頑として譲る気配がない。ゴンザレス司法長官が軍による本紙への訴追を否定した後でも、ブニエ報道長官は「軍の判断にゆだねる」と発言した。報道長官は軍最高司令官である大統領の報道官として、軍報道官を黙らせ、報道の自由がいかなるものかを説いてみせることもできたはずだ。しかし彼はそうはしなかった。

 軍報道官の放言や人をばかにしたような発言などにもかかわらず、大統領府報道官はバランスのとれた声明を出そうという意思がないようだ。文民統治の象徴は、自身の役割と国民に対し背を向けようとしている。(17日・インクワイアラー)

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