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3月13日のまにら新聞から

乗り越え不能な悲劇

[ 673字|2006.3.13|社会 (society)|新聞論調 ]

地滑り災害の衝撃

 南レイテ州セントベルナルド町で起きた地滑り災害の衝撃は、雪崩のように流れた政治ニュースにうずもれてしまった。災害地での復興作業が始まったと同時に、報道陣は現場を離れた。現場の土砂からは百五十二人の遺体が発見され、九百人が今も行方不明のまま眠っている。

 フィリピンでは伝統的に通夜が長く、死者との別れを長時間惜しむが、行方不明者が発見されない場合、遺族はこの突然の悲劇を乗り越えられないでいる。両親を含め家族四人を失った十五歳の少女は、「涙が止まらない。生きていけない」と極度の絶望感を表した。

 二日に行われた集団埋葬式では、現場上空を飛ぶヘリコプター二台から、聖水と花びらが土砂の上にまかれ、高さ約五メートルの十字架が立てられた。

 「可能なことはすべてやった。みんなで手を取り合えば、困難な状況から脱出できる」とレリアス州知事は話す。外国救援部隊による生存者救出、遺体収容作業は国際協力のモデルになった。

 これまでの救出と捜索作業は、避難民約三千人を再定住させるという挑戦に変わった。比赤十字のゴードン総裁は「ラ・ニーニャ現象の脅威があるため、再定住は半年以内に終了させるべきだ」と述べた。  

 「専門家の調査では、ある地域では雨水が土壌にしみ込んで二次災害の危険性がある。しかし、全員の再定住は不可能」と州知事は語る。災害再発の脅威にさらされる住民は、発生を予知できるよう教育されるべきだ。しかし、遺族に最も必要な教育は、「被災地ギンサオゴンのように深い悲しみも、時間がたてばいえる」という教えではないか。(5日・インクワイアラー)

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