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9月26日のまにら新聞から

独裁者は英雄か

[ 663字|2005.9.26|社会 (society)|新聞論調 ]

戒厳令布告33年

 政府は何の問題もないかのようにマルコス元大統領の遺体をタギッグ市の英雄の墓地に埋葬することを検討している。政府が表向き、計画自体を否定する一方で、マルコス家側はここ数週間政府の前向き姿勢を示唆する言動を繰り返している。

 マルコス元大統領による戒厳令布告から三十三周年。アロヨ政権はイメルダ夫人が要求する、マルコス元大統領を英雄として埋葬する異常事態に気付かないのだろうか。

 元大統領はフィリピン大統領史上で最も才気ある大統領となる「豪腕」を持っていたのは誰もが認めるところだが、「豪腕」のベクトルは国益に向けられることなく、国民がその犠牲者となったことは歴史が証明している。

 国軍の支持を得た民衆の力で元大統領が国外追放されるまで、われわれは独裁政権の手先による苦痛、拷問、処刑を見てきたはずだ。経済は荒廃し、負債は膨張した。マルコス独裁政権の二十年間に慣習化された政府機関内での汚職は現在でもわれわれの国を蝕んでいる。

 独裁政権の受益者であるマルコス家の人々にとっては、元大統領は紛れもなく英雄である。しかし元大統領による戒厳令下での国民の抑圧、独裁政治が残した負の遺産には、英雄性のかけらもない。

 戒厳令下に独裁政権が国民に与えた恐怖を消し去ることはできない。アロヨ政権はマルコスを英雄として埋葬することで、われわれが味わった恐怖と苦痛の日々を忘却させるつもりなのか。

 政治のご都合主義で「英雄」を再定義し、歴史を書き換え、英雄墓地へ埋葬する条件を変更することは国民の許容範囲を超えている。(21日・スター)

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