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8月8日のまにら新聞から

国家空洞化の危機

[ 669字|2005.8.8|社会 (society)|新聞論調 ]

OFW増の意味

 政府の財政担当者は今年の比人海外就労者(OFW)の送金額を百二十億ドルと見込んでいる。財政難に陥っている現政権、OFWの家族にとっては良い知らせである。政情不安が高まっても、OFWからの大量の送金額がフィリピン経済を潤し、自国通貨安定に役立っている。

 しかし良い知らせの裏側ではOFW家族が離ればなれで暮らす現実がある。子供たちは片親のまま育ち、さらに不幸な子供は両親不在のまま生育する。

 家族や親類、近隣者が海外就労による送金で経済的な成功を収めるのを目の当たりにすると、国内を脱出して外国で仕事を求める人が多くなる。OFW送金で恩恵を受ける家族にとってはまさに良い知らせである一方、国家の長期的存続、家族のきずなという点に焦点を当てれば全くの逆効果である。

 医療機関からの海外への人材流出が深刻な問題となっている。近い将来、国内医療機関は人材不足で危機的状況に陥ると指摘されている。厚生長官は先日、現在六千人の医者が海外で看護師として就労するため勉強中と明らかにした。この傾向は、医療職に限らず、教育者、技術者など発展途上国で需要の高い、貴重な人材が海外へ流出している。

 全人口の約一割に当たる八百万人の比人労働者が海外で働いている。子供のために十分な教育費を貯めて帰国するもの、事業費を貯めて帰国するものなどさまざまだ。しかし、多くのOFWは帰国しようとせず、家族を就労国に引き寄せ永住しようとしている。

 人材という貴重な国家資源が流出する傾向は簡単には終わらない。国家空洞化の危機と言わねばならない。

(5日・スター)

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