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3月28日のまにら新聞から

勝者と敗者は誰か

[ 697字|2005.3.28|社会 (society)|新聞論調 ]

パッキャオ選手の敗戦

 国民的英雄のボクサー、マニー・パッキャオ選手がメキシコのエリック・モラレス選手に敗れた。比国内では「もしモラレスの頭突きで右目上から出血していなかったら?」「愛用ブランドのグローブを使用できていたら?」など、多くの「もし?」が話題になっている。あきらめきれない気持ちは理解できるが、われわれはモラレス選手の技量、経験がパッキャオ選手より勝っていたことを素直に認めるべきだろう。

 パッキャオ選手はまだ二十六歳。最後まで全力を尽くした試合を恥じる理由は何もなく、闘志を持ち続ける限り雪辱の機会は必ずやってくる。アロヨ大統領の言葉を借りると、パッキャオ選手は「困難を乗り越えるために必要なタフさ、強い国にするための戦い方を国民に見せた」のだ。

 試合に勝ったのは言うまでもなくモラレス選手だが、大きな恩恵を受けた「勝者」はほかにもいた。

 二年前、強豪のメキシコ人選手をパッキャオ選手にKOされたメキシコ国民、そして試合の興行主は間違いなく「勝者」となった。メキシコ国民は二年前に傷付けられた誇りを取り戻し、興行主は入場券販売やテレビ放映権で大もうけした。

 比国内の「勝者」は試合を放映したテレビ局だろう。ラウンドの間に数え切れないほどのコマーシャルを入れて広告収入を稼いだ。その多さは、広告を制限する方法はないのかと思わせるほどだった。さらに、広告効果を上げるため放送時間を夜間に設定し、ラジオに試合結果を先に報道されてしまう始末。速報というメディアの役割よりも金もうけを優先させた結果で、このような試合中継を見せられたテレビ視聴者は間違いなく「敗者」だった。  (22日・インクワイアラー)

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