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2月14日のまにら新聞から

包括和平遠のく

[ 682字|2005.2.14|社会 (society)|新聞論調 ]

MNLF前議長派の攻勢

 一九九六年、ラモス政権との間で和平協定を結んだイスラム最大勢力、モロ民族解放戦線(MNLF)の前議長支持派が、スルー州で国軍攻撃を開始した。今回の攻撃で、仮にアロヨ現政権とイスラム急進派、モロ・イスラム解放戦線(MILF)が和平合意に達したとしても、ミンダナオに包括的な和平が訪れないことがはっきり示された。

 前議長派が攻勢を強める背景にあるのは、現政権の八方美人的政策だ。和平を急ぐあまり、エストラダ前政権下に制圧されたMILF拠点を事実上返還するだけでなく、新たな権限をMILFに与えようとしているが、これは九六年の和平協定締結でMNLFが確保したイスラム教徒自治区(ARMM)での権益・影響力の縮小を意味する。

 しかし、MNLF議長のフシンARMM知事は、アロヨ大統領のイエスマンと化しており、MNLFのために戦おうとはしない。このような状況下で、MNLF分派と位置付けられるようになった前議長支持派がMNLFの権益保持という旗印の下に求心力を高め、イスラム過激派、アブサヤフと連携して国軍攻撃を仕掛けても不思議ではない。

 国軍によると、スルー州で国軍攻撃を仕掛けた武装勢力の一部は「アブサヤフ」だという。しかし、比米合同軍事演習などの「成果」で、勢力を減退させてきたとされるアブサヤフが、果たして組織だった波状攻撃を仕掛けることができるだろうか。また、アブサヤフの手法は、軍事的攻撃ではなく、誘拐が中心だったはずだ。和平政策の失敗を意味する前議長派の勢力拡大を隠すため、国軍は前議長派をアブサヤフと決めつけているのではないか。(9日・トリビューン)

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