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1月17日のまにら新聞から

森林伐採は無罪?

[ 695字|2005.1.17|社会 (society)|新聞論調 ]

土砂崩れ災害

 今から一カ月ほど前にケソン州とアウロラ州で土砂崩れ災害が発生した時、森林伐採がやり玉に挙げられた。この大災害の犯人は伐採業者だと名指しされ、災害を避ける解決策として大規模な植林が必要だとされた。そして現在では、被災した地域を復活させるために家屋の再建や生計手段の獲得、心身ともに傷ついた人々を癒す慈善事業が始まっている。

 しかしこれですべてが解決するのだろうか。科学者は誰もが聞きたくないような声明を出している。火山地震研究所の専門家らは、「今回の土砂崩れ災害の主な原因は森林伐採ではない。急な斜面や分厚い表土層、そして山の地形などからなる地勢が要因で、大雨ごとに災害を繰り返すことになる」と指摘しているのだ。これの意味するところは明らかである。被災したインファンタ、レアル、そしてナカールの三町の住民は安全のために現地での生活を諦めよ、ということなのである。

 まずこの表明を聞きたくないのは被災した住民たち自身であろう。故郷を離れて家や生計手段、農場や漁場を失いたくないのは当然だ。地方自治体首長らもそれは望んでいない。誰もいなくなった町の町長になることなどどうやってできるだろうか。

 政府も同様だ。財政危機の最中に避難民用の新しい家や仕事を用意することはできない。現地で活動する共産ゲリラも支持母体となる住民を失うことになり、困るだろう。現地に土地を購入した投資家も町が消えることに反対するだろうし、比開発銀行ですらレアル町に港湾施設建設事業を計画しており利害が絡んでいる。誰もが決定を下したくない状況だが、もし科学者たちの訴えが正しければどうなるのだろうか。(15日・スター)

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