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4月30日のまにら新聞から

「領土・EEZ防衛に貢献」 日本が移動式レーダー引き渡し

[ 1318字|2024.4.30|政治 (politics) ]

三菱電機製の移動式警戒管制レーダーをフィリピン空軍に引き渡し。鬼木防衛副大臣「領土・EEZの防衛に貢献」

引き渡された三菱電機製移動式レーダーシステムの前で握手する鬼木防衛副大臣(中央左)とテオドロ国防省(中央右)。式典には遠藤和也新大使も参加した(鬼木氏の左)=29日午後4時ごろ、首都圏ケソン市国軍本部で竹下友章撮影

 防衛装備移転三原則の策定(2014年)以降日本にとって初めての防衛装備品の海外移転(海外輸出)例となっている4基の警戒管制レーダー(三菱電機製)のうち、唯一の移動式であるレーダーシステム「TPS―P14ME」の引き渡し式が29日、首都圏ケソン市国軍本部で行われた。日本から鬼木誠防衛副大臣やテオドロ国防相らが出席した。

 陸上自衛隊向けの「JTPS―P14」に基づき新設計された同レーダーは、比空軍の要望により補足範囲が250カイリ(463キロメートル)まで拡大されており、また比空軍によると、空中の標的だけなく、海上の船舶、陸上の目標も探知可能だ。

 比空軍のマリアコンスエロ・カスティーリョ報道官(大佐)は記者団に対し、同レーダーは戦術輸送機C130のほか、船による運搬も可能で、島しょも含め「戦略的エリア」への配備を行う予定。ブラウナー参謀総長は今月、まにら新聞など一部メディアに対し、比政府が今年3月から開始した「包括的群島防衛構想」(CADC)の下、南沙諸島で比が実効支配する2番目に大きい高潮高地であるパグアサ島や、最北のバタネス州マブリス島などの戦略的に重要な離島にレーダーやミサイルを配備する計画があることを明らかにしている。

 防衛副大臣着任後初めて比を訪問した鬼木副大臣は、引き渡し式で木原稔防衛相のスピーチを代読。「わが国の装備品がフィリピンの領空、領海、排他的経済水域(EEZ)の防衛に貢献できることをうれしく思う」とし、比がCADCで重視するEEZの防衛にも役立つことを指摘。「インド太平洋地域における安全保障環境が一層厳しさを増している中で、両国が警戒監視能力を高め連携できれば、抑止力の向上にも資する」と今後の協力の強化に期待を示した。

 さらに、「フィリピンを含む同盟国・同志国と連携しながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現し、地域の平和と安定を確保していくことは、わが国の安全保障にとっても死活的に重要だ」と強調。南シナ海で比公船、比海軍職員に損傷・負傷を与えるところまでエスカレートしている中国の行動を念頭に、「南シナ海を巡る問題は、地域の平和と安定に直結する国際社会の正当な関心事項であり、わが国は南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対していく」と宣言した。

 ▽今週比日防衛相会合も

 テオドロ国防相はスピーチで、「(来月2日にハワイで開かれる予定の)比日米豪防衛相会合の後に、2カ国間の防衛相会合を開く予定だ」と述べ、比日国防相会合が開かれることを示唆した。

 同相は引き渡し後のインタビューで、パグアサ島に移動レーダーを配備する可能性について「肯定もしないが、否定もしない」とし、その可能性を示唆。また既存のレーダーシステムと新しいレーダーを統合的に運用する方法について「既に統合運用プロセスを進めている」としながら、比沿岸警備隊(PCG)本部内にある国家沿岸監視センター(NCWC)で一元管理する可能性については、「必要であれば共用も考えるが、基本的にこのレーダーは国軍用に使用される」とした。(竹下友章)

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